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想いは、華。 まだ ツボミではあるけれど。 The Encounter その日、仕事初日の昼食時。 一つ一つの部隊は、訓練の内容によって食事をとる時間がまちまちである。 大体は正午12時前後だが、変則的だ。 たいてい、実戦がないときはデーナが指揮するグループと、ダンが指揮するグループに分かれている。 どちらにしても、食事には絶対に1時間以上は取らない。 午後にも訓練があるので、あまり重いものはよくないし、かといってしっかり栄養を取らないと、きつい訓練には耐えられない。 食事を取るのは、朝食時と同じ食堂になっている。 いつもなら、兵士達は給仕係のおばさん達と軽口をたたいたり、逆に若い兵士はおばさん達にどやされたりしながら、配膳が行われる。 しかし今日は、今日からは……ちょっと事情が変わりそうな気配がしていた。 12時ちょうど。 ダンが指揮する部隊の訓練が終ったらしく、50人弱が一斉に食堂に入ってきた。 普段ならそのままパッとトレーを取って、列に並び、食事をよそっていく。 何気ない時間だ。 が…… 「おい、早く進めよっ! 俺はあの子によそって貰うんだってば!!」 兵士達がざわめいている。 「何にしますか? お肉かお魚がありますけど」 「ほら、ほら! あんた達、若い女の子がいるからって呆けないの! さっさと先に進みなさい! ほら、あんたは肉にするの魚にするの?」 「いやぁ〜……。こうなるとはな、予想しとったけど。上部もよく許したな」 一応、混乱しながらも配膳がほぼ終った頃、ダンがサリに話しかけた。 「なかなか成績は良かったらしいわよ。本人がどうしてもここに配属されたいって、希望したらしいの。気も利くし、すごくいい子よ」 ダンはそれを聞くと、一瞬驚いたような顔をして、吹き出した。 「はじめまして、リリアンちゃん、やろ」 その独特の方言が面白かったのか、リリアンは少し笑ってダンの皿に魚を出した。 「どうぞ」 ――遠目でみても美人だが、目の前で微笑まれると、その可愛らしさが際立つ。ダンはそのリリアンの笑顔を見て、満足そうに微笑んだ。 「美人さんはいつでも大歓迎や。この泥だらけの連中に、ちょっと花を添えてやらんといかんしな」 ダンがそう、断言するような口調で言うと、リリアンは安心したような顔をした。 「分かりました、一生懸命働きますね」 ダンもそれを聞くと、笑いながら席について食事を始めた。 そして、ダンの部隊の食事がほぼ終わりに近づいた頃。 遅れて、デーナの部隊が入ってきた。 「はぁ〜! 飯だ!」 がやがやと兵士達が軽口を叩きながら入ってくる。 最後の方になってやっと、デーナが視界に入った。 兵士達の列がほぼ途切れだした頃、デーナは配膳される場所に寄ってくる。 「ご苦労様。どう、上手くいってる?」 名前を呼ばれた三人がぺこりと頭を下げた。 「ご苦労。何か問題があったら何時でも言ってくれ」 そして一瞬だけリリアンに目を移すと、すぐにそらしてサリの方を見た。 「反対することもあると思うけど、この子もちゃんと働いてくれてるわよ。助かってるわ」 それえでも、サリがリリアンの事を言った瞬間、デーナの表情が厳しくなったのは明らかだった。 その後姿を見送りながら、サリがまた意味ありげにため息を付いた。 リリアンはそう答えつつも、心の中は棘が刺さったような感覚だった。 「よ! デーナ隊長!! 遅いお昼で」 「お前のところが早いんだよ」 「いや、実は急かされてな。早く食堂行って可愛い子ちゃんを拝みたいってな」 「…………」 「わかっとる、お前はこういうのは反対なんやろ? でもま、いいやろ。息抜きにもなるし、その方が精が出るってもんだ。見てみぃ、皆嬉しそうやないか」 「にやけてるだけだろう」 「……同じ事や」 デーナが食堂を見回すと、確かに兵士達の間に、いつもはない華やかさがあった。 「それに、今日みたいに騒がれんのは最初のうちだけや」 残されたデーナがため息をつくのは、離れた所にいるリリアンにも分かった。 |
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