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出逢い。 そう、それはまだ心もとない スタート地点…… Le Rancontre デーナが彼女を見ると、さらに驚いた。 想像していたゴリラ・タイプなどではなく、大きな茶色の瞳が愛らしい美女だ。 大きな茶色い瞳、綺麗にのびた眉、白い肌。 「フレスク指揮官……ですよね。ごめんなさい、生意気な事を言って。でも……私達も、きちんと覚悟を持ってこの任務に就くのだという事を、知っていただきたいんです。ただの給仕係が生意気ですが……」 デーナが黙っているのを怒りととったのか、彼女が遠慮がちに言った。 「えっと、フレスク指揮官」 デーナはその書類を一瞥する。と、小さな溜息をついて、こう言った。 「とりあえず、宿舎を案内する。女性用の宿舎は俺達兵士とは別になっていて監視も付いてる。部屋で荷物を解いてくれ、30分したら基地内の案内をする」
* ――案内されて、彼女たちは各々与えられた部屋に入った。 その女性宿舎は、質素ではあるが清潔な感じの建物だ。確かに他の宿舎からも少し離れていた。 基本的に、二人一部屋が割り与えられる。 「まぁったく! 30分で何が出来るって言うのよねぇ? あの汚いジープに1時間も揺られてたんだから、シャワーくらい浴びさせて欲しいわ」 その"天使" と同室になったのは、彼女とは逆に活発そうな女性だ。 「まぁ、そんなこと言わないで。基地の案内が終わればきっと時間があるわよ」 「どうかしらね、あの指揮官ときたら、厳しいので有名だっていうじゃない」 彼女はそう言って、荷物を解く手を止め、隣の活発そうな女性を見上げた。 「貴女が彼に話しかけた時は、びっくりしたわよ? 運転手も言ってたじゃない、"今日私たちの出迎えに来てくれる指揮官は、厳しいので有名だから口答えはしないように" って!」 薄茶色の髪の美少女は、少し考え込むように黙った。そして上目遣いで彼女を見上げたまま、続ける。 「忘れてたわけじゃないの。でも急に口をついて出ちゃって……。そんなに厳しい人には見えなかったし」
* デーナは、渡された書類に目を通していた。 4人のリストと彼女達の役割、そして個々の履歴書のようなものが、写真付きで揃えられている。 1人は衛生管理師で、50代後半の女性だ。幾つかの病院で働いた後、ここに配属されることになったらしい。他の3人は給仕係で、そのうち2人はすでに別の基地での仕事の経験がある。 デーナは"彼女" のリストを見た。 名前はリリアン・カーヴィング。 他の給仕係の2人も、ここの給仕係たちの平均年齢に比べれば若い。が、すでに他の基地で同じ仕事をしていたことがあるようで、問題はなさそうだ。 (まぁ、すぐに弱音を吐いて出て行くか……) だが同時に、何か今まで味わったことのない……妙な気持ちが湧いたのも、事実で――。 新人の兵士でも、デーナに意見する者は滅多にいない。
* しばらくすると、4人の女性群が制服姿で彼のもとに集まった。 「これから基地の案内をする。地図はないから頭に叩き込むように。兵士が声を掛けてくるだろうが無視してくれ、いいな」 まずデーナは4人を連れて食堂に入る――と、否が応でも全員の注目を浴びた。 食事中だった兵士達が皆、デーナに連れられた彼女達をを眺めた後、表情を一転させる。 理由は分かっていた。――リリアンだ。 たとえこんな環境でなくても、彼女は人目を引くだろう。 デーナに言われた通り無視はしていたが、リリアンはその愛想の良さそうな笑顔を崩さない。 それでも、デーナが彼女達の傍に付いているので、兵士達は皆控えめにしていた――。 その後、他の訓練所や宿舎などの説明を一通りする。 重要な基地なので、他の敵に知られることを恐れて、地図は一切作られていない。全て頭に入れて叩き込む必要があるのだ。 4人とも大人しくデーナの説明を聞き、多少の質問が出ると、案内は終った。 その間も終始、リリアンは大人しくデーナの言うことに耳を傾けていた。 が…… 「これで説明は終了だ、今日はもう宿舎に帰って休んでいい。明日からは早速働いてもらう。厳しいが頑張るように」 他の3人を各自の部屋に戻した後、デーナとリリアンは宿舎前の電灯の下で向き合った。 リリアンはまだ、なぜ自分だけが呼ばれたのか分かっていない様で、不思議そうにデーナを見返している。 ――こうして近くで見ると、彼女は本当に綺麗だった。 吸い込まれてしまいそうな大きな瞳が美しい。 だが、だからこそ……こんな所に居るべきだとは思えない。 「ミス・カーヴィング」 「それにここは、あんたの様なお嬢さんが適応できる場所じゃない。冒険とでも考えてたのだろうが、そういう事なら他でやってくれ」 ――が、リリアンの返事は意外だった。 「辞退は、しません……」 「軍の人事部は、きちんと私のことを認めてくれました。私はここで働く権利があるはずです。もし私の身の危険について仰っているのなら……気にしないで下さい。きちんと覚悟はしているつもりです」 「覚悟? 笑わせないでくれ。あんたはここの現実を知らない。悪いことは言わないからさっさと帰るんだ」 「あんたみたいのじゃ、いくら警護したってそのうち襲われる。1人や2人が相手じゃない、複数にだ。ここの連中相手じゃ、あんたはヤリ殺される事だって考えられる。だいたい"権利" がどうのこうのなどと寝ぼけた事を言っているようじゃ、ここではやっていけないんだ。そんなものここでは通用しない」 「…………」 「飢えた狼達に餌を放り込んだらどうなる? 我慢しろという方が酷だ。そうなったらその連中は軍会議に掛けられて処罰、下手すれば終身刑。そんな事になる前に帰ったほうがいい。あんたは"覚悟" とやらをしているんだから、いいだろうけどね」 デーナに強い口調で言われ、リリアンは黙った。 「……それでも」 「――私はここを離れません」 ――2人が向き合うと、その瞳が、ぶつかり合う。 「――分かったよ。後悔しようがレイプされようが、それはあんたの責任だ。俺は忠告した」 そう言い渡すと、デーナはリリアンを残して踵を返した。 |
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